化学05 マグネシウムの燃焼と質量の変化(定比例の法則)

 

 マグネシウムを燃焼させて、燃焼前と燃焼後の質量を比較する実験です。マグネシウムと酸素は3:2の割合で化合するはずですが、なかなかうまくいきません。理論通りにいかない実験の代表格と言ってもよいと思います。成功のポイントは「陶器の筒のついていない三角架を使って強く加熱すること」だと思います。


陶器の筒のない三角架の作り方

【準備物】
・#16(約1.6mm)のステンレス線 (60cm1本と35cm1本)
・ラジオペンチ1つと普通のペンチ1つ


【作り方の手順】

1 60cmのステンレス線を半分に折って輪をつくり、ラジオペンチではさむ。
2 手でひねって、ねじったところががちょうど7cmになるようにする。
3 ペンチでねじって仕上げをする。
4 1辺が7cmの三角形になるように35cmのステンレス線を組み合わせ、ラジオペンチではさむ。
5 手でひねって、ねじったところが7cm以上になるようにする。
6 ペンチでねじって仕上げをする。
7 正三角形になるようにラジオペンチではさむ。
8 手でひねって、ねじったところが7cm以上になるようにする。
9 ペンチでねじって仕上げをする。
10 このような形になる。
11 余分なところを切って、それぞれが7cmになるようにする。
12 三角形の中央から折って、このような形に折り曲げる。
13 ラジオペンチではさんで、中央の出っ張りを残して、もとに戻す。
14 3箇所とも元に戻す。
15 三角形の各辺の中央にへの字型の出っ張りができた。
16 形を整えてでき上がり。出っ張りをつけると三角形の辺の長さは6cm程度になる。
17 三脚の上に置いたところ。
18 ステンレス皿をのせたところ。
19 裏から見たところ。
20 横から見たところ。3つの出っ張りに支えられているのが分かる。

【実験方法】

ア 市販の三角架は陶器の筒がついており、ガスバーナーの火がステンレス皿に当たりにくいため十分に加熱することができない。そのため陶器の筒のない三角架を使う。炎も大きくして(15cm程度)思い切り強く加熱する。空気も多く入れてゴーという音がする程度にする。

イ マグネシウムは、0.5g程度が実験しやすい。四捨五入の関係で、各班に0.53gずつ配るのが最も良い。

ウ 2分間加熱したあと、よく冷やしてから質量を測る。測定が終わったら、薬さじの背のほうを使って細かくすりつぶし、2回目、3回目を行う。3回とも加熱時間は2分間とする。2回目の加熱では、時々チカチカとかがやくので、燃焼していなかったものがあることが分かる。3回目の加熱では、ほとんどチカチカしない。たまに1、2回する程度である。


【実験結果】

予備実験の結果 実験値 理論値
加熱前の質量(g) 0.53 0.53
1回加熱後の質量(g) 0.83  
2回加熱後の質量(g) 0.87  
3回加熱後の質量(g) 0.88 0.88
増加した質量(g) 0.35 0.35
実際の授業での結果 1班 2班 3班 4班 5班 6班 7班 8班
加熱前の質量(g) 0.53 0.53 0.53 0.54 0.53 0.53 0.54 0.54
3回加熱後の質量(g) 0.87 0.88 0.86 0.90 0.88 0.88 0.90 0.89
理論値(g) 0.88 0.88 0.88 0.90 0.88 0.88 0.90 0.90
実験値と理論値の差(g) 0.01 0 0.02 0 0 0 0 0.01

 


【その他】

ア 加熱時間を長くすると1回加熱しただけで理論値に達してしまう。教科書では「加熱するたびに質量が増加するが、あるところから増えることがなくなり一定の値になる。」となっているので、1回の加熱時間は2分程度にする方がよい。4回加熱できれば申し分ないが、授業時間内に納めることが難しい。また、4回目は生徒がだれてくるという問題もある。

イ 電子てんびんは0.01gまで計れるものを使用する。安価なものは、再現性や直線性に問題がある場合があるのでよくない。安いものを何台も買うよりも、高くても正確なものをみんなで使う方が良い。値段はやや高いが、音叉式の電子てんびんは目盛がちらちらしないので使いやすい。教材カタログでは、ケニス理科機器 電子てんびん RJ-1200 72,600円 (ViBRA 新光電子株式会社製)などがある。

ウ 教材カタログには出ていませんが、ViBRA 高精度電子天びん(防水・防塵型)CJ-820 約90,000円 がお薦めです。新光電子の音叉式てんびんの新型です。この電子てんびんは、目盛がすぐに安定するだけでなく、最小読み取り単位を切り替えて表示させることができます。今回のような実験では、0.01gの単位まで表示させて使いますが、質量保存の実験のときは、表示を0.1gの単位までにします。これで、最小目盛が変化してしまって「これは誤差だから質量に変化はありません。」などと言うことがなくなります。

エ 1回目の加熱が終わったときに、皿にマグネシウムがこびりついて取れなくなる場合があるが、2回目の加熱をすると取れるので無理して取ろうとしないほうがよい。無理して取ろうとすると粉をこぼしてしまったりする。

オ ステンレス皿を冷やす時は、昔給食で使われていたアルミのお盆を使うとよい。熱くなって変形して、上にのっているステンレス皿がはねたりすることはない。アルミのお盆2枚を使って冷やした場合、約3分で冷やすことができる。私は机が心配なので、アルミのお盆の下に木版画用の板を敷いている。木版画用の板は安価に購入できるので、いろいろな実験に活用できて便利である。

カ 学校によってはガスバーナーの火力が弱くて理論値にならないことがある。ガスバーナーは製品によって火力に違いがあり、火力の強い製品はガスの出る穴の大きさが0.6mm程度であるが、火力の弱い製品はこの穴が小さい。そこで、0.6mmのドリルで穴を大きくするとよい。1mm以下の極細ドリルは非常に折れやすいので、電動ドリルではなく、ハンドドリルやピンデバイスなどを使用する。「リリーフ(RELIFE) 極細マイクロドリル刃セット0.3~1.0mm 20本組」などがあると便利。

キ 片付けの際、ステンレス皿をきれいにするには、まずうすい塩酸できれいにして、その後、真鍮ブラシでこするとよい。

ク グラフの書き方
 この実験では、グラフを書いてマグネシウムの質量と酸化マグネシウムの質量が比例することを確かめることが多い。そのため、各班ごとにマグネシウム粉末の量を変えてマグネシウムの粉末を配る実践が多いが、私は、全ての班に0.53gずつ配るようにしている。ワークシートに下記のような表を用意しておき、空欄の所に自分たちの実験結果を記入させた後でグラフを書かせるようにしている。

マグネシウムの質量(g) 0.3 0.5 0.9 1.2 1.5
3回加熱した後の酸化マグネシウムの質量(g) 0.5   1.5 2.0 2.5
化合した酸素の質量(g) 0.2   0.6 0.8 1.0


ケ ステンレス皿の大きさは一般的には8cmであるが、6cmのほうが高温が得られるのでよいとしている実践もある。しかし、混ぜるときには8cm程度あったほうが混ぜやすいので、8cmのものを使用している。

コ マグネシウムをかき混ぜるときは、金属製の薬品さじを使うのが一般的であるが、すぐに洗っておかないとさびてしまうので注意が必要である。私は100均のアイスクリーム用のステンレスのスプーンを使用している。先が平らになっているので、薬さじよりもむしろこっちの方が使いやすい。また、スプーンに付いた酸化マグネシウムの粉を落とすのに100均の筆も用意している。

サ 三角架を作るときに最初三角形の1辺が7cmになるようにしているが、できあがりの1辺が6cm程度になるので、やや小さいと感じるかもしれません。その場合は最初のときに8cmにしておくと、できあがりが7cm程度になります 。

シ 当然のことだが、マグネシウムは新しいものの方がよい。0.53gずつ使用した場合、25g入りのものでも45回分以上ある。割安だからと言って500g入りのものなどを購入しないようにすることが大切である。ただし、神経質になりすぎる必要はなく、封を切ってから数年間は問題ない。

セ 下の表は、300メッシュの新品の銅粉を使った場合の結果である。300メッシュの新品の銅粉はピンク色をしている。加熱時間は1回目4分、2回目3分、3回目3分とした。
 ただし、マグネシウムの場合は2回目の加熱の時に、時々チカチカ光って、まだ酸化していなかったものが残っていたことが分かりやすいが、銅ではそのようなことがない。どちらかというとマグネシウムで実験した方がよいと思う。

  実験値 理論値
銅の質量(g) 0.80 0.80
3回加熱した後の酸化銅の質量(g) 1.00 1.00
化合した酸素の質量(g) 0.20 0.20