生物04 菌類・細菌類の実験


 この実験は気温の低い冬の時期(3年生の3学期)に行うことが多く、菌類・細菌類のはたらきが弱く、いつまでたってもデンプンが分解されないということになってしまいがちです。定温器があればうまくいくと思いますが、定温器がない学校も多いと思います。そこで、定温器の代わりに熱帯魚用のサーモスタット付きヒーターを利用する方法を試してみました。サーモスタット付きヒーターなら3000円程度で購入できます。 


【実験方法】
1 デンプン溶液に泥水や精製水を入れる
 試験管ABCDを用意し、ABにはデンプン溶液(各6mL)、Cには泥水(6mL)、Dには精製水(6mL)を入れます。使用する泥水は、土や落ち葉をガーゼに包んで精製水の入ったビーカーに入れて作ります。
 次にAのデンプン溶液にCの泥水を入れ、Bのデンプン溶液にDの精製水を入れます。そして細菌などが入らないようにふたをします。

 ふたは「マルエム ディスポPPキャップ P-21 100個入 2113円 」を使用しています。
 本来はリムなし試験管に使用するもので、直径が18のリムなし試験管なら P-18 が適合しますが、学校にあるものは直径が18のリム付試験管だったので P-21 を使用しました。ディスポとなっていますが、洗って再利用しています。
 以前はアルミ箔を6×6cmに切ったものをふたとして使用していましたが、切るのが面倒なので、現在は上記のキャップを使用しています。


2 試験管を温める
 水槽に水を入れ、その中にサーモスタット付きヒーターを入れます。水温が26℃ぐらいになるようにヒーターの目盛りを調整します。(サーモスタットの目盛を30℃ぐらいにすると水温が26℃ぐらいになります。)
 水温26℃の水の中に試験管ABを入れます。試験管が倒れないように、ビーカーを沈めてそれに立てるようにしています。そして、2日に1回程度、試験管をふってよく混ぜるようにします。
 分解が進むと、試験管の底の土から泡が出てきたり、土にあわがついて水面に浮かんできたりします。(下写真参照)


3 ヨウ素液で調べる
 1週間後にABの試験管にヨウ素液を1滴ずつ入れます。泥水を入れた方はヨウ素液に変化がなく、デンプンが分解されていることが分かります。精製水を入れた方は濃い青紫色になりデンプンが残っていることが分かります。
(デンプンが分解されるのに最短で4日程度かかりますから、余裕を見て1週間後に実験するようにします。試験管を余分に用意しておき、前日に予備実験を行い、デンプンが残っていないことを確認しておくとよいでしょう。)

ヨウ素液を入れる前  
[A] デンプン溶液に泥水を入れたもの。
[B] デンプン溶液に精製水を入れたもの
ヨウ素液を入れた後
[A] デンプン溶液に泥水を入れたものは変化なし。
[B] デンプン溶液に精製水を入れたものは青紫色になる。

【実験のポイント】
1 デンプン溶液は0.1%のものを使用する
 指導書には1%のデンプン溶液になっていることが多いですが、できるだけ早く結果を得るために、0.1%のものを使用します。0.1%でもヨウ素デンプン反応の色は十分に濃い青紫色になります。
2 試験管を電子レンジで滅菌する
 デンプン溶液を0.1%のものにすると反応が敏感に現れます。試験管などに菌類や細菌類などがついていると、精製水を入れた方もヨウ素デンプン反応の色が薄くなってしまうということがあります。そこで、実験に使う試験管などは電子レンジで空だきして滅菌します。滅菌する時間は2分程度でかまいません。
3 土は落葉樹の森で採集する
 土も重要です。菌類・細菌類などが豊富に含まれている土を使用する必要があります。私は運動公園の周辺のアラカシの森で土や落ち葉を採集しています。落ち葉に白いカビがみられる場所の土を落ち葉と一緒に採集します。
 各地域の運動公園の周りには森が広がっていることが多いと思います。比較的、人目を気にせずに採集できるのでお勧めです。


【その他】
ア 煮沸した泥水で実験するとどうなるか
 テスト問題などでは、煮沸した泥水では菌類・細菌類が死滅しているので、デンプンが分解されないようになっています。しかし、実際にはそうはなりません。なぜなら、耐熱性の芽胞といったものが存在し、菌類・細菌類は100℃では死滅しないからです。(下図参照)
 例えば、カレーをめちゃくちゃ煮込んでしっかりふたをしていたとしても、何日かすると腐ってしまいます。ボンカレーなどのレトルト食品をつくる時には、高圧釜などを用いて120℃以上の高温で加圧加熱殺菌をしているようです。

[左] デンプン溶液に泥水を入れたもの
[中] デンプン溶液に煮沸した泥水を入れたもの
[右] デンプン溶液に精製水を入れたもの

煮沸したものもデンプンが分解さています。

イ 焼いた土で実験するとどうなるか
 上記のアのようなことがあるため、焼いた土で実験することが一般的です。直接土を焼けば、より高温になるので、菌類・細菌類は死滅します。デンプンは分解されないはずです。理論的には正しいのですが、実際に実験するとなかなかうまくいきません。なぜなら、土を徹底的に焼くということが難しいからです。フライパン等でしつこく焼いた土を使っても、デンプンが分解されてしまうことが多いのです。(下図参照)

[左] デンプン溶液に泥水を入れたもの
[中] デンプン溶液に焼いた土で作った泥水を入れたもの
[右] デンプン溶液に精製水を入れたもの

焼いた土で作った泥水を入れたものもデンプンが分解されています。
(右の精製水のものよりも、やや色がうすくなっています。)

ウ 焼いた土で実験するためには
 次のような方法で泥水を作れば、デンプンは分解されません。
① ビーカーに泥水を作る。
② ガスバーナーで熱して泥水を沸騰させ、そのまま水がなくなるまで熱する。水がなくなってからも、さらに20分ぐらい熱して、ビーカーの底にこびりついた土を十分に焼く。
③ 火を消して、細菌等が入らないようにアルミ箔でふたをして冷えるのを待つ。
④ 上記のビーカーを電子レンジで加熱する。(この時アルミ箔のふたは取る。)
⑤ 精製水を入れて泥水にもどす。(細菌が入らないようにラップ等でふたをする。)