生物07 植物の吸水と蒸散の関係(試験管使用)
簡単そうに見えてやってみると難しい。そんな実験が意外と多いものです。例えば「植物の吸水と蒸散の関係」の実験もその一つではないでしょうか。まず、同じ大きさの葉が同じ枚数ついた枝を用意するのが大変です。さらに致命的なのは、同じような枝を用意しても、最初から水を吸い上げる量に違いがあるということです。見た目は似ていても1本1本に個体差があるわけです。
そこで、私は、植物の枝ではなくクズの葉を使っています。クズは同じ大きさの葉をたくさん集めることが容易ですし、水の吸い上げも良好です。また、葉柄が長く試験管にさすのにピッタリです。個体差については、たくさん用意しておいて、試しに1日程度水を吸わせ、その中から同じぐらい水を吸い上げるものを4つ選べば解決できます。
【事前準備】
① 同じぐらいの大きさのクズの葉を10枚程度取ってきます。(クズは複葉なので3枚のように見える葉が1枚の葉です。葉柄の長さは後で水切りをするので16cm程度は必要です。)
持って帰ったら、葉柄の部分を水中で切ります。(水揚げがよくなる方法の一つで 水切り と言います。これが重要です。)
葉柄の長さは、葉柄の先がつぶれると水の吸い上げが悪くなることがあるので、試験管の底につかないようにします。なお、クズの葉は複葉で、3つに分かれているところが試験管の口のところにひっかかって止まるので、葉柄が上下して水面の高さが変化することはありません。
② ①で用意したクズの葉を水の入った試験管にさします。そして、あらかじめ油性ペンで印をつけておいた高さになるようにスポイトで水の量を調節します。
③ 一昼夜おいて、確実に吸水しているかどうか確認します。きちんと水切りができていれば、5cmぐらいは下がると思います。その中から、なるべく同じぐらい水を吸い上げているものを4つ選びます。そして、減ったぶんの水をスポイトで入れて、水面の高さを元に戻します。
【当日の実験】
① 上記の方法で、同じぐらい水を吸い上げる4つの葉の入った試験管ア~エを用意します。
② アの葉は何も処理しません。イの葉は裏側にワセリンを塗ります。ウの葉は表側にワセリンを塗ります。エは葉を全部取ります。
③ 水面から水が直接蒸発するを防ぐため、食用油をスポイトで1mL入れて水面に浮かべます。
④ 翌日に水面がどのくらい下がったかを観察します。(下写真参照)
【実験結果】
24時間後の様子です。(はじめは赤い線のところまで水を入れていました。)
理論的には、水の減る量は 「ア=(イ+ウ)-エ」 となります。
ア 何も処理しない | イ 葉の裏にワセリンをぬる | ウ 葉の表にワセリンをぬる | エ 葉を全てとる | |
減った水の量 (24時間後) |
5.2cm | 1.4cm | 4.1cm | 0.1 cm |
今回の結果は、 ア=5.2cm (イ+ウ)-エ = 5.4cm となりました。誤差はありますが、ほぼ理論値通りになっています。たまにうまくいかないこともありますので、心配な人は2セット準備しておくといいでしょう。
【その他】
・生徒実験で行うことも可能ですが、準備や後片付けが大変なので、私は演示実験でしています。生徒の前で準備したものを普通教室の前に置いておけば、休み時間等に結果を見ることができます。
・最近の教科書では、試験管ではなくシリコンチューブを使った実験が紹介されています。短時間で結果が分かってよい面もあるのですが、演示実験として見せる場合には試験管を使った実験のほうがよいと思います。
・ワセリンは、チューブに入っているベビーワセリンが塗りやすいです。(健栄製薬 60g入りが350円程度)
・エの葉を全部取ったものは、試験管に引っかからなくなるので、セロハンテープで引っかかりを作ります。(下写真)
・水面に食用油を浮かべることについては、やらなくてもほとんど結果に変わりはありませんが、教科書ではそうするようになっています。最近は、洗うのもめんどうなのでやらない年もあります。
・食用油を入れた後でも、スポイトで水の量を増やしたり減らしたりできます。水のほうが密度が大きいので、水の量を増やすときには、上から水を落としただけで簡単に入ります。