生物08 植物の吸水と蒸散の関係(シリコンチューブ使用)


 以前は、水の入ったメスシリンダーや試験管に植物の枝を入れて、吸水と蒸散の実験をしていましたが、最近の教科書ではシリコンチューブで実験する方法に変わりました。しかし、実験に適した植物の枝を探すのが大変です。
 そこで、私は、植物の枝ではなくクズの葉を使っています。クズは同じ大きさの葉をたくさん集めることが容易ですし、水の吸い上げも良好です。また、この実験では、葉の面積が大きくてシリコンチューブが細いと変化の量がよく分かるようになりますが、クズの葉は面積が大きく葉柄が細いので、この実験にピッタリです。
 また、同じような植物の枝を用意しても水を吸い上げる量に個体差がある場合がありますが、クズの葉をたくさん用意しておいて、試しに1日程度水を吸わせ、その中から同じぐらい水を吸い上げるものを4つ選べば解決できます。


【事前準備】 
① 同じぐらいの大きさのクズの葉を10枚程度取ってきます。(クズは複葉なので3枚のように見える葉が1枚の葉です。葉柄の長さは後で水切りをするので16cm程度は必要です。) 
 持って帰ったら、葉柄の部分を水中で切ります。(水揚げがよくなる方法の一つで水切りと言います。これが重要です。)
 葉柄の長さは、葉柄の先がつぶれると水の吸い上げが悪くなることがあるので、試験管の底につかないようにします。なお、クズの葉は複葉で、3つに分かれているところが試験管の口のところにひっかかって止まるので、葉柄が上下して水面の高さが変化することはありません。
② ①で用意したクズの葉を水の入った試験管にさします。そして、あらかじめ油性ペンで印をつけておいた高さになるようにスポイトで水の量を調節します。
③ 一昼夜おいて、確実に吸水しているかどうか確認します。きちんと水切りができていれば、5cmぐらいは下がると思います。その中から、なるべく同じぐらい水を吸い上げているものを4つ選びます

 

【実験方法】
① 上記の方法で、同じぐらい水を吸い上げる4つの葉ア~エを用意します。
② アの葉は何も処理しません。イの葉は裏側にワセリンを塗ります。ウの葉は表側にワセリンを塗ります。エは葉を全部取ります。
③ 水中で長さ15cmの水の入ったシリコンチューブをつなぐ。(内径が2.5mmのものがぴったりでした。3mmのものは太すぎました。)詳細はこのページの最下部参照。
④ 水平にして取り出しバットの上にのせる。(縦にして30秒ほどたつと、葉柄とシリコンチューブの間から空気が入るので注意する。)
⑤ ペーパータオルで水気を取り、マスキングテープで机に貼り付ける。ワセリンが机につかないように葉の部分を机から出す。(下写真参照)
⑥ はじめの水位のところにマッキー(油性ペン)で印をつける。(手でこするとマッキーの印はとれるので、シリコンチューブは再利用できます。)
⑦ シリコンチューブの中の水がどのくらい吸収されるかを観察する。

 

【実験結果】
 4分後の様子です。はじめは印のところまで水がありました。(下写真参照)
 理論的には、水の減る量は「ア=(イ+ウ)-エ」となります。

ア 何も処理しない  4分後 3.1cm 吸水 【動画があります。】
イ 葉の表にワセリンをぬる  4分後 2.5cm 吸水
ウ 葉の裏にワセリンをぬる  4分後 0.8cm 吸水
エ 葉を全部とる  4分後 0.2cm 吸水

 今回の結果は、 ア=3.1cm (イ+ウ)-エ=3.1cm で、理論値通りになりました。

【その他】
・シリコンチューブは、内径2.5mm 外径4mm 長さ1m のものをアマゾンで購入した。
 「タイガースポリマー シリコンチューブ カット品 2.5mm×4mm 1M 588円」(下写真参照)
 クズの葉に使用する場合、内径2mmでは細すぎ、3mmでは太すぎました。

 

・水気を切るときは「スコット カーショップタオル」が便利です。乾かして何度も使えるので経済的です。
 2クラスで実験が続く時に、濡れた実験器具を拭かせるのにも便利です。


・以前のメスシリンダーや試験管を使った方法に比べ、授業中に結果が出るのがよいところである。ただし、演示実験で見せる場合は今ひとつだと思います。以前の方法なら、準備をした後、普通教室前にでも置いておけば、休み時間等に生徒たちに見せることができるのですが、この方法だとそれができません。