その他04 ろ紙の裏表
あまり気にしなくてもよいのかもしれませんが、ろ紙には裏表があります。アドバンテックのカタログを見ると次のようになっています。
「製品の包装に品名が表示されている側が、濾紙のおもて面になります。濾紙のおもて面が一次側(濾過前の流体と接する側)になるように、セットしてください。反対(濾紙のうら面を一次側とする)にセットすると、濾過寿命が短くなることがあります。」
アドバンテックにメールで濾紙の裏表の理由について問い合わせたところ、次のような内容の返事をいただきました。
①濾紙は、原料である植物繊維を水に分散した上、金網で抄くって平たく紙層を形成、その後、乾燥して製造している。
②出来上がった紙は、金網側の方が繊維密度が高くなっている。
③懸濁液を濾過した場合、繊維密度が高い側から低い側へ濾過するよりも、繊維密度が低い側から高い側へ濾過した方が、濾過液量が多くなるため、紙を抄いた際の金網側をうら面としている。
さて、実際に濾紙を肉眼で見た様子はどのようになっているでしょうか。
おもて面(製品の包装に品名が表示されている側)のほうは、凹凸がなくつるつる(平滑)になっています。
うら面の方は、おもて面よりも凹凸があります。また、平行な縞模様がうっすらと見えます。濾紙を90°回転させると同様に平行な縞模様が見えますので、格子状に跡が付いていることが分かります。これは、金網ですいたときにできたものと思われます。ですから、見た目や手触りで判断する場合は、「つるつる(平滑)」がおもて面で、「ざらざら」がうら面ということになります。繊維密度が低い側の方が「つるつる」しているというのは、なんとなく不思議な感じがしますが、そのようになっているようです。
「つるつる(平滑)」した方を内側にして4つに折った濾紙と、「ざらざら」した方を内側にして4つに折った濾紙を使って濾過速度を比較してみました。
【実験1】水に片栗粉を混ぜて濾過する。
(結果)「つるつる」を内側にしたほうが、つまり、正しくセッティングした方が、わずかに濾過のスピードが速かったです。しかし、気にするほどの違いではありませんでした。
【実験2】水にコーヒーシュガーをとかして濾過する。
(結果)コーヒーシュガーは水にとけるのだから、濾過速度に差はないと予想していましたが、「つるつる」を内側にしたほうが、つまり、正しくセッティングした方が、わずかに濾過のスピードが速かったです。しかし、気にするほどの違いではありませんでした。
【まとめ】
濾過速度に違いが見られる原因として、①「繊維密度が高い側から低い側へ濾過するよりも、繊維密度が低い側から高い側へ濾過した方が、濾過液量が多くなる」ということの他、②「濾紙がガラスに密着しすぎないほうが、濾過速度が速くなる」ということがあるのではないかと思います。
濾紙をひだ折りにして濾過を行う場合、ひだの数が少ない方が濾過速度が速くなります。これは、ろうとに接している部分の面積が少ないほうが、濾過速度が速いということだと考えられます。つまり、濾紙とガラスの間にすき間がある方が、濾液がスムーズに下に流れて行くということです。(注:ひだの数が極端に少ないと、角がつぶれてしまって、ろうとに接している面積が増えるので、濾過速度が遅くなる。)
濾紙の凹凸がある方を外側にすると、濾紙とガラスとの間にわずかなすき間ができるので、濾過速度が速くなるのではないかと思います。
また、私の感覚ですが、ざらざらの面を外側にする方が、ろうとにセットしやすいように思います。つるつるの面を外にすると、ろうとに密着しすぎて濾紙がしわになってしまうことがあります。その点からも、つるつるの面を内側に、ざらざらの面を外側にしてセットするほうがよいと思います。
ネットで検索すると「つるつるの面を内側にする」となっているものと「ざらざらの面を内側にする」となっているものの両方があります。「ざらざらの面を内側にする」となっているものは、「繊維密度が低い→ざらざらな面」という誤解から生じたものではないかと思われます。
後日、安積濾紙に「定性濾紙 Φ125 No.1」について問い合わせたところ、次のような内容の返事をいただきました。
①濾紙には、厳密には表裏がある。
②裏側(ざらざら)と表側(平滑)が有るが、非常に判別し辛い。
③表面から通液させるのが一般的だが、当該品番ではそこまで厳密な設定はない。