小学校05 水にとけているものを調べる(6年生)

 水溶液のにおいを調べたり、加熱して水を蒸発させたりしたときの様子を調べます。
 簡単な実験ですが、塩酸やアンモニア水のにおいがしなかったり、炭酸水を加熱した場合に蒸発皿に後が残ってしまったり、食塩水を加熱したときに食塩が飛び散ったりするなど、うまくいかないこともよく起こります。
 そもそも、理科に不慣れな先生にとっては、塩酸をうすめることさえ敷居の高いことだと思います。できるだけ簡単にできて、失敗のない方法について考えてみました。 


【準備物】

[塩酸 4%]
 すぐに使えるようにうすめてある塩酸をスマートスクールなどで購入して使用します。濃度は3~4%程度のものがよいです。9%の塩酸でもかまいませんが、安全性を考えると3~4%程度のものがよいでしょう。(ただし、塩酸でアルミニウムを溶かす実験の時には9%の塩酸が必要です。)
 9%の塩酸をうすめて3~4%程度の塩酸にする場合は、精製水でうすめてください。水道水には不純物が含まれているので、加熱して水を蒸発させたときに蒸発皿にあとが残ります。精製水はドラッグストアなどで購入できます。空になった精製水の容器は、ラベルをはがして、薬品の保存容器として再利用することもできます。
 においについては、教科書には「ある」となっていますが、9%の塩酸でもほとんどにおいはありません。子供はにおいに敏感なので、分かる児童もいますが、分からない児童も多いです。3~4%の塩酸のにおいが分かる児童はほとんどいません。薬局で売っている10%の希塩酸のラベルの性状には「においはしない」と書いてあります。授業では「教科書ではにおいがあるとなっていますが、小学校の実験で使う塩酸はうすめてあるのでほとんどにおいはしません。」と説明するのがよいと思います。
 なお、濃塩酸をうすめて目的の水溶液をつくることは、慣れていない人にとっては難しいですし、濃塩酸の容器は、一度栓を開けると、いくら栓を固く締めても気体が蒸発して薬品庫を錆びさせてしまいます。はじめからうすめてあるものを購入したほうがよいでしょう。(濃塩酸を保管するときは「揮発性薬瓶収納ボトル」に入れておく必要があります。ヤガミなどで購入できます。)

[食塩水 12%]
 12%程度のものがよいでしょう。100mLの水に14gの食塩をとかすと12%になります。試薬の食塩でなくてもかまいませんが、にがりの成分が少ない「食塩(塩化ナトリウム99%以上)」と表示のあるものを使いましょう。

[炭酸水(純水仕立てのもの)]
 天然水のものでなく、純水仕立てのものを使用します。例えば「おいしい純水仕立ての炭酸水(コスモスのプライベートブランド)」や「ポッカサッポロ おいしい炭酸水(純水使用)」などがあります。天然水のものは、加熱して水を蒸発させたときに蒸発皿にあとが残ります。なお、コスモスの「おいしい純粋仕立ての炭酸水」も販売元はポッカサッポロです。

 

[アンモニア水 2.5%]
 2.5%のものを使用します。においについては個人差が大きく、うすいと分からない児童がいます。1.5%ではうすすぎます。2.5%のものは「ヤガミ理科消耗品カタログ」などで購入できます。または、ドラッグストアなどで売っている10%のものを精製水で4倍にうすめます。水道水でうすめると、加熱して水を蒸発させたときに蒸発皿にあとが残るので注意しましょう。


【実験方法】「水溶液を加熱して水を蒸発させる実験について】
1 児童の化学実験では量を少なくすることが大切です。水溶液をスポイトで3滴(0.23mL)ほど蒸発皿に入れて加熱する。これで十分です。量が多いと時間もかかり、発生するにおいも多くなります。(注: ここで使用するスポイトは、後で紹介する自作のストロースポイトです。)
2 実験用ガスコンロで中火で加熱し、液が半分になったら、またはパチパチ飛び散りだしたら火を消す。液体が残っていても、蒸発皿は持てないほど熱いので、冷ましているうちに液体は蒸発してしまうので、再び加熱する必要はほとんどありません。

【実験結果】
食塩水は食塩が出てきます。塩酸、アンモニア水、炭酸水は何も残りません。

食塩水
炭酸水(純水使用)

【その他】
ア ストロースポイト(自作実験器具) 
 下記の製品の組み合わせで試験管の中の水溶液を取り出せるロングスポイトができます。3滴分は約0.23mLになります。実験後に洗うのも簡単です。また、安いのでストロー部分を使い捨てにすることもできます。
・神田ゴム化学 カラースポイト 1mL 10個 605円 
・ストリックスデザイン ストレートストロー 植物由来原料配合 60本 クリア 18cm 直径5mm SD-915 147円
 なお、ストロースポイトは普通のスポイトに比べて1滴の量が多くなります。ストロースポイトの3滴分は、普通の教材のスポイトの5滴分に相当します。

 

イ 飛散防止の金網
 食塩水を加熱するときに使用します。水溶液を少量にするとほとんど飛び散らないので、なくてもかまいませんが、飛散防止の金網があると便利です。100均のアク取りを改造して作ります。

ウ 精製水のボトルの再利用
 空になった精製水の容器のラベルをはがして薬品の保存容器として再利用しています。健栄製薬の精製水はワンタッチ式キャップになっており、ボトルから試験管に直接つぎ分けることができます。試験管につぎ分けて配付するときは、これが一番早いです。ポリプロピレン製で薬品にも強く、値段も安価です。