化学25 質量保存の法則(スチールウールの燃焼)


 酸素を入れたフラスコの中でスチールウールを燃焼させ、反応前後の質量を比較する実験を行います。密閉された容器内で化学変化が起こる場合、全体の質量は変化しません。しかし、栓をゆるめると外部の空気がフラスコ内に流入するため、質量は増加します。この実験は教科書でも紹介されており、スチールウールが花火のように燃える様子は非常に美しく、演示実験として生徒に見せたいと考える教員も多いと思います。
ところが、この実験は見た目以上に難しい面があります。電流を流してスチールウールに着火させようとするのですが、うまく火がつかないことがよくあります。スライダック(可変変圧器)があれば比較的容易ですが、一般的な電源装置では着火しにくいのが実情です。
 実験のポイントは、スチールウールの取り付け方にあります。丸めたスチールウールをそのまま取り付けるのではなく、一部を細く伸ばして取り付けます(下写真参照)。細くした部分に電流が集中して流れることで、その部分が赤熱して反応が始まり、全体へと燃焼が広がります。


【準備物】
・スチールウール 2g
 2gがちょうどよい。それ以上だと大きすぎて丸底フラスコの口を通らない。ボンスター(日本スチールウール株式会社)がちぎりやすくてよい。(ボンスターは一個が約6g)
・導線付きゴム栓
 ア 銅線 直径2mm ホームセンターで購入
 イ ゴム栓(一穴)No.8 理科ウチダス
   1.5 mm のドリルで穴を開け、そこへ銅線を差し込みます。ペンチで銅線を短く持ち、少しずつ押し込むようにして進めます。反対側から銅線の先端が出てきたら、その部分をペンチでつかんで引き抜くようにする。
 ウ ガラス管 6mm 理科ウチダス
 エ ガラス管切り 8-615-0443 2926円 理科ウチダス  
 オ シリコン管 内径5mm、外径7mm 理科ウチダス 
   ガラス管に水をつけてシリコン管を深く差し込みます。また、圧力がかかるため、差し込んでいない側のシリコン管もある程度の長さを残しておくようにします。
 カ ダブルクリップ 鋏口19mm ダイソーで購入 
   シリコン管を密栓します。ダブルクリップを使うことで、より確実に密栓できます。ピンチコックよりも締め付け力が安定しており、漏れの心配が少ない点が利点です。
・丸底フラスコ ハリオ 500mL 理科ウチダス
 圧力がかかる実験では、平底フラスコではなく、必ず丸底フラスコを使用してください。
・水槽用の砂 「水作 水槽の天然砂 AS-07 川砂 1.0リットル 371円」
 赤熱したスチールウールが銅線から落下してガラス面に直接触れると、局所的に高温になり、丸底フラスコが割れる危険があります。これを防ぐためには、落下したスチールウールが絶対にガラスに触れないよう、底に十分な量の砂を敷いておく必要があります。目安としては、およそ100 cm³程度の砂を入れておくようにします。砂場の砂をそのまま使うと細かな汚れが付着してフラスコ内部が見えにくくなり、観察に支障が出ます。砂を洗浄して乾燥させる作業は手間がかかるため、最初から洗浄不要な水槽用の砂を購入して使うようにします。
・スライダック(可変変圧器) なければ 電源装置
 スライダックがある場合は、安定して大電流を供給できるため、問題なく着火させることができます。可能であればスライダックを使用してください。スライダックがない場合は電源装置を用いますが、その際は十分な電流を流せる機種であることが必須です。今回使用したウチダ TY‑5RA は定格出力が20V・5Aで、着火に必要な電流を確保できました。定格出力が小さい電源装置や、大電流が流れた際に保護回路が作動するタイプのものは、この実験には適しません。
・電子てんびん ViBRA 新光電子株式会社製) CJ-620 90,000円
 値段はやや高めですが、再現性や直線性に優れ、表示の目盛がちらつかないため非常に扱いやすい電子てんびんです。最大の特徴は、最小読み取り単位を切り替えて表示できる点で、0.01g・0.02g・0.05g・0.1g・0.2gの5段階から選択できます。今回の実験では最小読み取り単位を0.05gに設定し、目盛の変化による誤差を避けます。
 ケニスの検索サイト「りかなび」では、新光電子(ViBRA)製の電子てんびんとして、CJR‑620(151,000円)や CJ‑620(90,000円)などが見つかります。CJR‑620 は価格はさらに高いものの、自動校正分銅を内蔵しており、手軽に校正できる点が大きな利点です。別途校正用分銅を購入する必要がないため、運用面でもおすすめできます。
 



【実験方法】
1 丸底フラスコに酸素を入れ、スチールウールを取り付けたゴム栓をしっかり装着する。準備ができたら、装置全体の質量を電子てんびんで測定する。


2 スチールウールに大電流を流して着火させる。装置への負荷を小さくするため、反応が始まったら速やかに電流を切る。


3 反応が終わったら冷めるのを待ち、再度装置全体の質量を測定する。反応前後で質量に変化がないことを確認し、密閉系では質量が保存されることを確かめる。フラスコが熱い状態だと、フラスコ本体や内部の空気が膨張し、その結果として空気中で受ける浮力が大きくなり、実際よりも質量が小さく測定されてしまう可能性がある。


4 栓(ダブルクリップ)をゆるめると、シュッという音とともに外の空気が容器内へ流れ込みます。その後、再び容器を電子てんびんにのせて質量を測定し、空気が入った後の値を確認します。

 


【実験結果】
 酸素を入れすぎると、燃焼が激しくなりすぎてスチールウールが銅線から落下したり、鉄が溶けて塊状になってしまうことがあります。さらに、強い火花が生じてフラスコの内面に跡が残る場合もあります。こうしたトラブルを避けるため、反応はやや小さくなりますが、酸素の量は控えめにしておく方が安全で安定した結果が得られます。

① 酸素を少なめに入れたとき 【動画はこちら】

 

反応前の質量(g) 反応後の質量(g) ふたをゆるめた後(g)
416.00 416.00 416.30


② 酸素を多めに入れたとき 【動画はこちら】

 

反応前の質量(g) 反応後の質量(g) ふたをゆるめた後(g)
414.50 414.50 414.85

 


【反応前と反応後のスチールウールの比較】(酸素を控えめに入れたとき)

① 反応前


② 反応後