生物09 だ液の実験
簡単な実験ですが、だ液の採集が・・・。本来なら生徒自身のだ液を使うのがいいのでしょうが、落ち着いた雰囲気で実験できるのか心配です。私は、教師一人で全ての班のだ液を用意しています。「全部の班のだ液を一人で用意できるの?」「大変じゃないの?」と思われる方も多いと思いますが、必要なだ液の量はごくわずかなので思ったよりも簡単なのです。
だ液は、1班につき10倍にうすめたものが4mL必要です。ですから、例えば2クラス(20班分)だと、うすめただ液が80mL必要となりますが、元々のだ液は8mLあればいいわけです。
生徒のだ液でやりたいというこだわりのある人は、前日の放課後に有志の生徒から集めるとよいでしょう。うすめただ液は冷蔵庫に保管して翌日に使用することが可能です。
※ 大根おろしの汁などをだ液の代用品として使うことについては、このページの一番最後を見てください。
【準備物】
10倍にうすめただ液 80mL (2クラス 20班分)
① まず、50mLのビーカーに口から直接だ液を出します。よだれをたらすようにします。実験の準備をしながら「口の中にだ液がたまってきたら出す」という感じで集めていきます。ある程度集まったら、10mLのメスシリンダーに入れます。30分ぐらいで4mLぐらい取ることができます。しばらく休んでから、また4mL取って、合計8mLにします。
② ①で集めただ液を100mLのメスシリンダーに入れ、精製水で10倍にうすめます。2クラス 20班分の場合だと、8mLのだ液をうすめて80mLにします。
③ ②のうすめただ液をティッシュペーパーでろ過します。こうすると、透明でさらさらした液体になり、不潔な感じがほとんどしなくなります。ろ過するとティッシュにしみ込んだ分体積が減るので、精製水を加えて80mLにもどします。(注:ろ紙やコーヒーフィルターではろ過できません。時間がかかりすぎます。)
※ うすめただ液は、放課後等に用意して冷蔵庫で保管すれば、翌日に使用することが可能です。実験当日の朝準備してもかまいません。私の場合は前日の放課後と当日の朝の2回に分けて採集しています。
デンプン溶液 約0.33%
一班に8mL必要です。2クラス20班分で、合計160mL必要になります。予備実験等の分を含めて、デンプン0.7gを210mlの精製水にとかしたものを用意します。(デンプンを水に入れて、時々かき混ぜながら加熱してとかします。)
マイクロピペット(ケニス マイクロピペット 1-10mL BDL-10000)
試験管8本 試験管立て 300mLビーカー 沸騰石 ヨウ素液 ベネジクト液 ストップウォッチ(タイマー) 試験管ばさみ チャッカマン ガスバーナー マスキングテープ(名札用) 電気ポット
【実験方法】
1 試験管8本(ABCDEFGH)を用意する。
試験管ABCDにでんぷん溶液を2mlずつ入れる。
試験管EFにうすめただ液を2mlずつ入れる。
試験管GHに水道水を2mlずつ入れる。
(マイクロピペットがあると便利。あっという間に分注できます。)
(うすめただ液を入れるときは、試験管の壁を伝わらせるようにして入れて泡立たないようにします。)
2 Aにだ液、Bに水を入れるてよくふる。Cにだ液、Dに水を入れてよくふる。
(このときによくふっておかないとデンプンが十分に分解されないことがあります。)
3 ABCDの試験管をビーカーに入れた40℃のお湯で5分間温める。
(私はビーカーの代わりにプラスチックの取っ手付きのコップを使用しています。)
4 温めている時間に、実験結果を予想する。(説明したり挙手させたりしていると5分以上かかる。)
5 ABにヨウ素液を1滴ずつ入れて、デンプンの有無を調べる。
6 CDにベネジクト液を20滴ずつ入れる。(このぐらい入れないと赤褐色になりません。)
沸騰石を3つぶずつ入れる。
試験管ばさみを使ってガスバーナーで加熱する。(炎の中央あたりで、軽く振りながら加熱する。)
沸騰して、試験管の半分ぐらいまで上がってきたら、火から遠ざける。
麦芽糖などの有無を調べる。
【実験結果】
A 変化なし(デンプンがなくなった。)
B 青紫色(デンプンが残っている。)
C 赤褐色の沈殿(麦芽糖などができた。)
D 変化なし(麦芽糖などができていない。)
Cは、時間がたつと下図のように沈殿します。
【その他】
ア この実験では、デンプン溶液、うすめただ液、水など、数多くの液体を計りとる必要があります。あらかじめ教師の方で計って試験管に入れておくと実験がスムーズです。
普通の駒込ピペット(ガラス製)でもできますが、マイクロピペットがあればあっという間に分注できます。安価なものとしては「ケニス マイクロピペット 1-10mL BDL-10000 8,000円」などがおすすめです。ネットで探すともっと安価な製品(例えば3000円ぐらい)もありますが、安すぎる物はピストンが重くて使いものになりません。マイクロピペットは値段は安くありませんが、理科室に1つあると便利です。「ケニス理科機器」等のカタログから購入できます。
※ マイクロピペットの使い方はこちら
イ 体温ぐらいのお湯を用意しなければなりませんが、私は電気ポットを使用しています。電気ポットの液晶表示が40℃になったらタイマーのボタンを押します。タイマーの状態にすると加熱は止まりますが、給湯することはできます。
ウ 試験管に貼るラベルについては、マスキングテープ(3M スコッチ マスキングテープ 18mm)を利用しています。白表紙にクラフトテープを貼り、その上にマスキングテープを貼ります。カッターで切れ目を入れ、各小片に油性ペンでABC等を記入します。養生テープでもできます。
以前はビニールテープを使用していましたが、たまに跡が残ってめんどくさいことになることがありました。また、試験管に直接書いて、後でナイロンたわしで洗い落とすこともできますが、後片付けはマスキングテープの方が楽です。
大根おろしの汁などをだ液の代用品として使うことについて
コロナ禍などの影響もあり、だ液の代用品として、「大根おろしの汁」「おかゆペルパー」「タカジアスターゼなどの胃腸薬」等を利用する実験がWeb等で見られることがあります。しかし、いずれも、中学校の実験に使うのは不適当だと思われます。
小学校の実験では、デンプンが分解されることをヨウ素液で確かめるだけなのでいいのですが、中学校の実験では麦芽糖などができたことを確かめる必要があります。ところが、「大根おろしの汁」は、それ自体にブドウ糖が含まれているのです。「おかゆヘルパー」や「タカジアスターゼなどの胃腸薬」も、それのみでベネジクト反応が起こるので、おそらくブドウ糖などが含まれているのではないかと思われます。
この実験では、対照実験として「デンプン溶液に水を加えたものはベネジクト反応を示さない」ことを確認するようになっていますが、本来なら「だ液そのものはベネジクト反応を示さない」という対照実験も必要なはずです。
(※ 念のため調べてみましたが、だ液のみではベネジクト反応が起こりませんでした。)