生物12 ゾウリムシの培養と観察


 2年生では単細胞生物の学習を行います。水の中の微生物を観察するのが定番ですが、観察に適した水を得るのはなかなか大変です。私は「田んぼの水の観察」と「ゾウリムシの観察」を行っています。ゾウリムシは体の中の様子が透けて見えるので、一つの細胞の中にさまざまな構造が発達していることを学習に適しています。また、ゾウリムシはめだかの餌として、簡単にネットで購入できる点も便利です。「田んぼの水の観察」については→こちらを参照


【購入の仕方】
 十数年前は販売しているところがほとんどなく、「楽知ん商店街」ぐらいだったのですが、現在は、ネットで検索すると、いろいろなところから販売されています。今回は、アマゾンで下記の製品(濃縮ゾウリムシ30mL×2本)を購入し、ペットボトルで培養して増やしたものを観察に使用しました。はじめから大容量で販売しているものもありますので、そちらを購入した方が手間がかからなくてよいかもしれません。
・《めだか街道》濃縮ゾウリムシ(生体》30mL 2本 (合計60mL)  培養酵母5錠付 498円 アマゾンで購入
・マエダ 麦ごはんの素 200g(40g×5)340円 マエダ オンラインストアで購入

 


【培養の仕方】
 1回の実験で30mL程度使います。購入した量では心許なかったので、ペットボトル4本に培養してから観察を行いました。ゾウリムシの餌としては、マエダのはだか麦を使用しました。ペットボトルの水400mLにはだかむぎを8粒(約0.2g)入れて、購入した濃縮ゾウリムシを10mL入れました。以前はエビオス錠(ビール酵母)を使っていたのですが、マエダのはだか麦は、水がにごったり臭くなったりしにくいのでおすすめです。
 また、ペットボトルの水は、酸素を供給するため、100mL程度減らして上部に空洞を作り、線香で4カ所ほど穴を開けたプラコップをかぶせておくようにします。
 気温にもよりますが、5日程度経つと次の動画のような状態になります。

【動画1:ペットボトル内のゾウリムシの様子】
【動画2:顕微鏡で見たゾウリムシの様子(40倍)】
【動画3:顕微鏡で見たゾウリムシの様子(400倍)】


【観察の仕方】
 ゾウリムシは泳ぎ回っているので、ペットボトルの水そのままでは、顕微鏡でうまく観察することができません。ろ紙を使ってろ過し、ゾウリムシを濃縮してから観察します。
 まず、ゾウリムシがたくさんいる箇所の水を30mLとって、ろ過します。そして、ろ紙の上の水がもう少しでなくなるというところでスポイトで吸い取ります。30mLを0.4mL程度に濃縮するようにします。ギリギリまで待ってから吸い取るのがこつですが、慣れないうちは難しいので、普通の水で練習してから行うとよいと思います。
 そして、濃縮した水を、ホールスライドガラスに1滴落として、カバーガラスをかけて観察します。0.4mLの水で10滴分ぐらいになります。

(注)スポイトに吸い取ってから時間がたつと、ゾウリムシが一部分に集まってしまいます。時間が経ったときはスポイトの中の水を一度ビーカーに出して、再びスポイトに吸い込んでからホールスライドガラスに落とすようにします。 

 


ゾウリムシの動きを止めて観察する方法】
 ゾウリムシが泳ぎ回らないようにして観察したいときは、硫酸ニッケル水溶液を使用します。400倍で観察することができ、収縮胞や繊毛などの動きを観察することができます。
 0.4mL程度に濃縮したゾウリムシの入った水を一度ビーカーに出して、そこに硫酸ニッケル水溶液(0.005mol/L)を1滴加えます。その後、再びスポイトでその水を吸い取り、ホールスライドガラスに落としてカバーガラスをかけて観察します。

硫酸ニッケル水溶液(0.005mol/L)の作り方 
 NiSO4(6水和物)0.26gを精製水200mLにとかす。

(注)ゾウリムシは光のあるところに集まってくる性質がありますので、プレパラートにうじゃうじゃいる状態にしておけば、プレパラートの中心部に集まってきて身動きが取れなくなります。そうなれば、硫酸ニッケル水溶液を使用しなくても400倍で観察できるようになります。上記の【動画3:ゾウリムシの観察(400倍)】は、硫酸ニッケル水溶液を使わないで撮影したものです。