小学校04 塩酸に金属がとけた水溶液を加熱する(6年生)
アルミニウムや鉄のとけた塩酸を加熱し、水溶液にとけている物質を取り出して反応前のアルミニウムや鉄と比較します。どのぐらいの量の水溶液を加熱すると、どのぐらいの量の物質を得ることができるのかまとめてみました。
この実験で使うアルミニウムや鉄のとけた塩酸については、前時に行う「塩酸に金属をとかす実験」で作ったものを使用します。詳しくは「小学校03 塩酸にアルミニウムをとかす」を見てください。
【準備物】
・アルミニウムのとけた塩酸
前時の「塩酸に金属をとかす実験」でできた水溶液を使う。
・鉄(スチールウール)のとけた塩酸
前時の「塩酸に金属をとかす実験」でできた水溶液を使う。
・蒸発皿(青色のもの)
・実験用ガスコンロ
・ミニスプーン(プラスチック)
100均で購入。この実験では、熱くなった蒸発皿等に薬品さじを当ててしまいダメにしてしまうケースが見られるので100均のミニスプーン等がよい。
・飛散防止の金網
100均のアク取りを改造してつくる。なくてもよいがあると便利。
・塩酸(9%)
加熱して取り出した物質を再びとかすのに必要 スマートスクールで購入 1L 2,871円
【実験に使う水溶液の濃度について】
この実験では「水溶液を加熱したときのにおいで気分が悪くなった。」というニュースを聞くことがある。事前の実験では、できるだけ未反応の塩酸をなくすように、金属を限界近くまでとかしておく方がよい。また、たくさんとかしておいたほうが加熱した時に出てくる物質の量も多くなるので好都合である。
前時の実験では、アルミニウムについては、9%の塩酸3.3mLに0.07gのアルミニウムをとかした。9%の塩酸3.3mLにはアルミニウムが最大で約0.077gとけるので、限界量の約90%までとかしたことになり、濃度は約1%にまで下がっている。
また、スチールウールについては、9%の塩酸3.3mLに0.1gのスチールウールをとかした。9%の塩酸3.3mLにはスチールウールが最大で約0.16gとけるので、限界量の約63%までとかしたことになり、濃度は約3%にまで下がっている。
アルミニウムに比べスチールウールをとかす量が控えめになっている理由は、スチールウールは限界ぎりぎりまで入れると翌日になってもとけ残ることが多いためである。
【実験方法】
1 児童の化学実験では量を少なくすることが大切である。アルミニウムのとけた液0.5mLを蒸発皿に入れて加熱する。これで十分である。量が多いと時間もかかり、発生するにおいも多くなる。
実験用ガスコンロで中火で加熱し、液が半分になったら、またはパチパチ飛び散りだしたら火を消す。液体が残っていても、蒸発皿は持てないほど熱いので、冷ましているうちに液体は蒸発してしまうので、再び加熱する必要はほとんどない。どうせ持てないのだから、気長に待つこと。
また、水溶液が少量なのであまり飛び散らないため、なくてもよいが、アク取りで作った飛散防止の金網があると便利である。
2 出てきた物質を試験管に入れ、9%の塩酸を4mL加えて、泡を出さずにとけることを確認する。0.5mLの液を加熱した時にできる量の粉末で十分に実験できる。逆に量が多いととけきらないので注意。4mLは2mLのスポイトで2回取らせるようにする。
また、9%の塩酸はかなり濃度が高いので、心配なら教師が入れて回ってもよい。その場合は10mLまではかれるマイクロピペットがあると便利。ケニス理科機器などのカタログから購入できる。
【実験結果】
アルミニウムのとけた塩酸0.5mLを加熱したもの |
鉄(スチールウール)のとけた塩酸0.5mLを加熱したもの |
加熱して出てきた物質を塩酸にとかしたところ(左がアルミニウム由来の粉末をとかしたもの、右がスチールウール由来の粉末をとかしたもの) |
【その他】
ア 教師が事前に大量に作って児童に配付する場合
アルミニウムやスチールウールのとけた液5mLを青い蒸発皿に入れて加熱する。量が多いと途中でかなり飛び散るので、アク取りで作った飛散防止の金網をかぶせるようにする。また、この程度の量を加熱するとにおいが結構するので、児童の実験には不向きである。
また、塩化アルミニウム、塩化鉄ともに、潮解性(空気中の水蒸気を吸ってどろどろになる性質)がある。教師があらかじめたくさん作っておく場合には密閉容器に保存しておくなどの注意が必要である。
イ ストロースポイト(自作実験器具)
下記の製品の組み合わせで試験管の中の水溶液を取り出せるロングスポイトができる。
・神田ゴム化学 カラースポイト 1mL 10個 605円
・ストリックスデザイン ストレートストロー 植物由来原料配合 60本 クリア 18cm直径5mmSD-915 147円
このスポイトは5cmの長さまで液体を取るとちょうど1mLになる。市販のスポイトよりも正確なくらいである。0.5mL取りたいときは2.5cmのところに油性ペンで印をつけておくとよい。
実験後に洗うのも簡単です。また、安いのでストロー部分を使い捨てにすることもできます。
ウ 粉末ロート
粉末を試験管に入れるときに便利。写真は「カルテル PP製粉末ロート 口径 : φ60mm 足外径 : φ15mm 足長 : 18mm (PP製) 1個 280円」で18mm×18cmの試験管にぴったり。カウネットなどで購入できる。