3 水素
※ 水素の発生装置は必ず試験管を使用してください。三角フラスコを使用すると、発生装置内の水素に引火した場合、三角フラスコが爆発して大事故になる場合があります。
※ 水素の作り方のポイントは、①11%のうすい塩酸を使うこと、②亜鉛は板状のものを使うこと、③うすい塩酸をあたためておくこと です。
気体の発生で最も難しいのが水素ではないかと思います。予備実験ではうまくいっていたのに、授業ではうまくいかないということが起こりがちです。これは、うすい塩酸の温度や気温などに反応速度が影響を受けるためです。そのため、安定した実験結果を得るためには、うすい塩酸の温度をコントロールする必要があります。
演示実験として「水素の鳴爆実験」や「水素のシャボン玉」なども行っています。
【準備物】
・うすい塩酸(11% または 10%)
11%がベスト。10%のうすい塩酸でもできますが、気体の発生が遅くなります。下記の方法で試験管6本(1本目は取り直す)で捕集すると、11%の塩酸だと4分30秒、10%だと7分程度かかります。
◆ 350mLの精製水に、130mLの濃塩酸を加えると11%のうすい塩酸ができる。
◆ 精製水と濃塩酸を3:1の割合で混ぜ合わせると約10%のうすい塩酸ができる。(正確には10.16%)
(注)精製水の方に濃塩酸を加えるようにしてください。
・亜鉛(板状)12×50×0.5mm
電池の実験などでよく使う板状の亜鉛を使用します。スマートスクール「金属板セット 穴なし(25枚入)①亜鉛 728-173 1111円」
教科書では華状の亜鉛を使うようになっています。それは粒状の物よりも面積が広いので反応がよいからです。しかし、華状のものは形がさまざまなので、同じ質量の亜鉛を使用しても反応速度に差が出てきます。その点、板状の亜鉛は形状が一定しているので、反応速度に差が出ません。また、価格も安いです。華状のものなら6g程度必要なところを、板状なら2枚(合計4g)で済みます。
・試験管(18×18) ・ゴム栓(黒No.2) ・シリコンチューブ ・ガラス管
・電気ポット ・クーラーボックス(塩酸をあたためるのに使います。)
【実験方法】
※ 水素の一番の特徴は可燃性です。そのため、私は試験管に5本捕集して、4本で可燃性を調べ、残りの1本で助燃性を調べるようにしています。1本目は空気が混ざっているために取り直します。実際には5本しか捕集しませんが、以下の内容で6本分取ることができます。
1 塩酸を約40℃にあたためる。
・電気ポットで50℃のお湯をつくる。(水温が50℃になったときに、タイマーのボタンを押すと、お湯は出るけれども加熱はストップした状態になります。) 瞬間湯沸かし器のある学校は、そこから適当な温度の湯を取ることもできるかと思います。
・50℃のお湯(約3L)をクーラーボックスに入れ、その中にうすい塩酸の入ったビーカーを入れる。10分ほど経つとうすい塩酸は約40℃になる。蓋を閉めていればかなり長い時間40℃前後を保つことができます。
2 試験管に亜鉛板(12×50×0.5mm)を2枚入れる。
3 11%のうすい塩酸10mLを加える。
4 1本目は空気が混ざっているので取り直す。
5 合計5本集めて、4本目は可燃性、残りの1本は助燃性を調べる。
6 もし、失敗して5本集められなかった場合は、11%の塩酸を5mL程度を継ぎ足してください。(10%の場合は10mL程度継ぎ足してください。)
・最初に配る塩酸を10mLずつビーカーに分ける時はマイクロピペットを使うと手早くできます。
使用した亜鉛板は
・使用した亜鉛板は黒くなってしまいますが、真鍮ブラシで磨くときれいになって、再利用できます。手が黒くなるのでゴム手袋をして行ってください。真鍮ブラシは、ホームセンターなどで普通に売っています。
[水素の鳴爆実験]
演示実験で行います。実験の仕方は【動画】を見てください。【動画】実験の様子はこちら。
ビデオでは爆発音がほとんど録音されていませんが、実際には280mLのペットボトルでも、かなり大きな音がします。欲張って大きなペットボトル(500mL等)で行わないようにしてください。また、万一の場合に備えて、安全メガネを着用させてください。
1 280mLのペットボトルの底を抜きます。縁を少し残すと爆発音が大きくなります。
2 ゴム栓(No.6)にガラス管(外径8mm)を取り付けます。(下写真はシリコン栓を使っています。)
ガラス管の長さはゴム栓のところからガラス管の先端までが8cmになっています。ガラス管にはビニールテープを巻いて、万一割れた場合にも飛び散らないようにしていますが、先端部のみ火をつけるのでビニールテープが巻いてありません。ガラス管を外径6mmにするとうまくいきません。また、ガラス管の長さも大切で、長すぎても短すぎてもうまくいきません。ゴム栓は爆発時に抜けないようにするため、ペットボトルの内側から刺してあります。
3 途中まで穴の開いたゴム栓を作り、ガラス管の先端にかぶせて蓋にします。
4 装置の下部からボンベを使って水素を入れます。
5 ガラス管の先端部に火をつけます。しばらくは先端部で火が燃えますが、やがてペットボトル内にも下の穴から酸素が入ってきます。そうすると、ペットポトル内に引火して爆発が起こります。
6 ペットボトルの内側が水滴でくもるのを確認します。

ゴム栓に8mmの穴を開けるときは、「スターエム 竹用ドリル」 (STAER-M) 8mm 601-080 1063円 が便利です。 竹の他、木、アクリル、塩ビ、 硬質ゴム にきれいに穴を開けることができます。同じ物が以前は「ゴム用ドリル」の名前で売られていました。(下写真参照)
[水素のシャボン玉]
演示実験で行います。
1 100均等でシャボン玉のおもちゃを買ってきます。
2 水素のボンベの先に買ってきたシャボン玉用の筒を取り付けます。
3 水素でシャボン玉を作って、勢いよく上に向かって上がっていく様子を見せます。
4 比較としてブタンガス(カセットコンロまたはライターのガス)のシャボン玉を作り、今度はあっという間に下に落ちていく様子を見せます。
5 水素やブタンガスのシャボン玉をアルミのお盆の上に作って火をつけて、燃える様子を観察します。水素は一瞬で燃えます。ブタンガスはゆっくりと大きく燃焼します。必ず予備実験をして、危険がないようにしてください。
※ 発生装置の先に付いているシャボン玉には火をつけないようしてください。発生装置が爆発すると危険です。
※ 飛んでいるシャボン玉に火をつけることも可能です。しかし、ブタンガスの場合シャボン玉が下に降りていきます。上からのぞき込むような姿勢で火をつけると火が顔の方に上がってきて危険です。シャボン玉をアルミのお盆の上に作って火をつける方が安全です。