化学24 質量保存の法則(炭酸水素ナトリウムとうすい塩酸の反応)
定番中の定番、「質量保存の法則」の実験です。以前は上皿てんびんを使っていましたが、現在は電子てんびんで行うことが多くなっています。手軽になった点は良いのですが、反応前と反応後で電子てんびんの値が一致しないことはありませんか。計器の誤差として説明することもできますが、できれば同じ値になってほしいところです。
実験のポイントは、炭酸水素ナトリウムの量を必要最低限にすることです。実験セットに付属している計量スプーンは、炭酸水素ナトリウムを1.0g量り取る仕様になっていますが、0.5mLの計量スプーンを使用し、使用量を0.5gに抑えます。
炭酸水素ナトリウムが多いと、発生する二酸化炭素の量が増えて圧力が大きくなり、容器から気体がもれやすくなります。また、容器が膨らむことで空気中で受ける浮力が大きくなり、質量が軽く測定されてしまうこともあります。これらの影響を防ぐために、炭酸水素ナトリウムの使用量を最低限にすることが重要です。
【準備物】
・炭酸水素ナトリウム 0.5g
固まると扱いづらいので、その都度スーパー等で購入した方がよい。写真は白鳥印で、50gが100円程度
・うすい塩酸 5% 7mL
5% の塩酸は、精製水 370 mL に濃塩酸 50 mL を加えて作る。マイクロピペットを使うと効率よくはかりとることができます。
・密閉できる容器 「ケニス 質量保存実験器 PET(6セット)」1-126-0422 2600円
ペットボトル6個、小さな試験管6本、計量スプーン1個 が入っている。
・計量スプーン 0.5mL ナガオ 極厚計量スプーン 0.5cc 363円 (7種類セットで2112円のものもある。)
下写真のステンレス製のものが「ナガオ 極厚計量スプーン 0.5cc」です。透明のプラスチック製の計量スプーンは、実験セットに付属のものですが、量が多くなりすぎるため使用しません。
・電子てんびん ケニス (A&D)電子てんびん バリューパック HT-300-JAC 3-105-0605 14,000円 最小表示0.1g 最大秤量310g
0.01gまで量れる電子てんびんではなく、あえて0.1gまでのものを使います。このことで最小目盛が反応後に変化してしまう割合を減らします。
低価格なものの中では比較的性能がよく、使いやすいと思います。これよりも低価格なものもありますが、再現性が悪く使い物になりませんでした。(再現性:同じ重さのものを何度も載せたり降ろしたりしたときに、表示される値がどれだけ安定して同じになるか)なお、電源を入れてしばらく経った方が測定値が安定するため、本来は自動電源オフの仕様になっていますが、今回はそれを解除しておきます。
私の場合、バリューパックに付属の収納ケースやACアダプターはほとんど使用していません。また、ステンレス皿も見た目は良いのですが、薬品が付着するとさびる場合がありますから、必ずしもバリューパックでなくてもよいかもしれません。
・マイクロピペット なくてもよいのですがあると便利です。
マイクロピペットの使い方はこちら
【実験方法(生徒実験)】
1 炭酸水素ナトリウムを、0.5mLの計量スプーンにすり切り一杯入れると、約0.5gになる。下写真のようにして、すり切り棒をビーカーに取り付けると、手際よくはかりとることができる。(実験セットに付属している計量スプーンはすり切り一杯で1.0gになり、量が多くなりすぎるので使用しない。)
2 はかりとった炭酸水素ナトリウムを質量保存実験器(PETボトル)に入れる。
3 付属の小さな試験管に、5%のうすい塩酸7mLを入れ、質量保存実験器に入れる。容器のふたをしっかりと締めた後、反応前の質量を電子てんびんではかる。
4 容器を横にして、試験管内の塩酸と炭酸水素ナトリウムを反応させた後、再び電子てんびんで質量をはかる。(この時、ふたに塩酸がつかないように注意すること。)
5 ふたをゆるめると、シュッという音がして中の気体が容器の外に出る。その後、もう一度電子てんびんに容器をのせる。
【実験方法(演示実験)】
生徒実験の後、高精度の電子てんびんで演示実験します。私が使っているのは、電子てんびん (ViBRA 新光電子株式会社製) CJ-620 90,000円 (下写真)です。値段はやや高いのですが、再現性や直線性に優れており、目盛がちらちらしないので使いやすいです。最大の特徴は、最小読み取り単位を切り替えて表示させることができると言うことです。(0.01g、0.02g、0.05g、0.1g、0.2gの5通りに設定できます。)今回の実験では、最小読み取り単位を0.05gに設置します。これで、最小目盛が変化してしまうことがなくなります。
ケニスの検索サイト「りかなび」で探すと、電子てんびん (ViBRA 新光電子株式会社製)CJR-620 151,000円 や CJ-620 90,000円
などがあります。CJR-620 は値段はさらに高いですが、自動校正分銅内蔵で手軽に校正ができます。校正用分銅を別に購入しなくてもよいのでおすすめです。
【動画:質量保存の法則(密閉系)炭酸水素ナトリウムとうすい塩酸の反応】
【実験結果】 (令和7年度)
2クラスで実験しました。※印は演示実験の結果
〔2年1組〕 すべての班で、反応の前後の質量が変化なしになっている。
| 班 | 反応前の質量(g) | 反応後の質量(g) | ふたをゆるめた後(g) |
| 1 | 36.7 | 36.7 | 36.5 |
| 2 | 36.8 | 36.8 | 36.6 |
| 3 | 36.8 | 36.8 | 36.7 |
| 4 | 36.7 | 36.7 | 36.5 |
| 5 | 36.7 | 36.7 | 36.5 |
| 6 | 37.0 | 37.0 | 36.8 |
| 7 | 36.8 | 36.8 | 36.6 |
| 8 | 37.0 | 37.0 | 36.8 |
| 9 | 36.8 | 36.8 | 36.6 |
| ※ | 36.75 | 36.75 | 36.55 |
〔2年2組〕 2班と4班は反応の前後で値が変わっている。その他の班は変化なし。
| 班 | 反応前の質量(g) | 反応後の質量(g) | ふたをゆるめた後(g) |
| 1 | 36.9 | 36.9 | 36.7 |
| 2 | 37.1 | 37.0 | 36.8 |
| 3 | 36.9 | 36.9 | 36.7 |
| 4 | 37.0 | 37.1 | 36.9 |
| 5 | 37.0 | 37.0 | 36.8 |
| 6 | 37.1 | 37.1 | 36.8 |
| 7 | 36.9 | 36.9 | 36.7 |
| 8 | 37.0 | 37.0 | 36.8 |
| 9 | 36.9 | 36.9 | 36.7 |
| ※ | 36.80 | 36.80 | 36.65 |
【0.01 g まで測定できる電子てんびんを使用した場合】
炭酸水素ナトリウムの量を少なくすれば、「生徒用の 0.01 g まで量れる電子てんびん」を用いても、反応前後の質量は同じか、差が出ても 0.01
g 程度に収まります。したがって、この程度の差であれば機器の誤差として扱っても不自然ではありません。この方法の方が、科学的な観点からはより適切と言えるかもしれません。
① 反応前の質量 37.00g
② 反応後の質量 37.00g
③ ふたを開けたときの質量 36.81g
【開放系の実験】
今回の教科書改訂で東京書籍の教科書からはなくなってしまったようですが、密閉されていない状態で実験すると以下のようになります。
【準備物】
・炭酸水素ナトリウム 0.5g
・うすい塩酸 1% 25mL
炭酸水素ナトリウムと反応したときに激しく泡立つのを抑えるために1%の塩酸を使います。危険性も低くなります。25mLと量が多くなりますが、軽くて倒れやすいPET樹脂カップを安定させる効果もあります。1%
の塩酸は5%の塩酸を5倍にうすめて作ります。
・PET樹脂カップ ニッチプラス(Niche Plus) COLD専用 使い捨てPET樹脂カップ 約720ml クリア 50個入り 1,540円 アマゾンで購入。この実験では反応時に泡立って液滴が飛び散るため、できるだけ背の高いカップを使用して飛散を防ぎます。このカップは高さが15.5cmあります。
・ビーカー ニッコー・ハンセン TPXビーカー100ml 292円
普通のビーカーでもかまいませんが、TPXのビーカーは液離れがよいので、この実験のときには特におすすめです。(液体をはじく性質のおかげで、中身がフチで止まらずにスッと切れたり、表面に残らずに戻っていったりします。)ナリカ等で購入できます。
・電子てんびん ケニス(A&D)電子てんびん バリューパック HT-300-JAC
【実験方法】
1 PET樹脂カップに炭酸水素ナトリウムを0.5g入れる。
2 TPXビーカーに、1%のうすい塩酸を25mL入れる。
3 1と2を電子てんびんに載せ、質量を量る。
4 炭酸水素ナトリウムにうすい塩酸を加える。できるだけ泡立たないように少しずつ入れる。また、電子てんびんと離れたところで行う。
5 反応が速やかに進むように、軽くカップを回すとよい。
6 反応が落ち着いたら、再び電子てんびんに載せて質量を量る。
① 反応前の質量 67.9g
② 反応後の質量 67.7g
【実験結果】
発生した気体(二酸化炭素)が空気中に逃げるため、質量が小さくなります。
上記の量で実験した場合、0.2~0.3g程度質量が小さくなります。必ず小さくなるので失敗することはほとんどありません。
【動画:質量保存の実験(開放系)炭酸水素ナトリウムにうすい塩酸を加える】